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【アナログ系電子回路の基礎】 (1時間目) |
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【リンクフリー】 私設研究所ネオテックラボ Neo-Tech-Lab.co.uk 【記載者】 【私設研究所Neo-Tech-Lab】 上田 智章 |
作成日 2008/12/29 修正日 2009/01/17 最終更新日 2010/03/16 |
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【まえがき】 何かパソコンに接続する計測機器を開発しようとすると、技術者の分業化が進んでしまっているために大掛かりなプロジェクトになりがちです。世の中の大半の企業では、ソフト屋(アプリケーション、組み込み)、ハード屋(アナログ、ロジック設計、マイコン、電源)、さらには基板屋(アートワーク)までと、細かく分業化が進んでいます。ちょっとした機器開発に4、5名のエンジニアが必要になることもあります。人が増えると意思疎通に必要な会議時間も増え、開発期間も長くなってしまいます。当然、開発費は膨らみます。世界的に不景気なご時世に、このような大型開発プロジェクトはもうあり得ないと思いませんか? ではどうすればよいのか?答えは共有の知識を持ったHyper-Generalistを大量生産することです。 電子回路技術(ハードウェア、ソフトウェアとも)の未経験者がシステム設計・開発に必要なエッセンスを修得するのに必要な時間は恐らくたったの24時間程度だと思います。三日坊主という言葉がありますが、1日8時間なら三日坊主にならずにすむでしょう?アナログ系電子回路の基礎 (1時間)、ディジタル系電子回路の基礎(1時間)、・・・・・と順次まとめていく予定です。(記事を書く方は三日坊主になる可能性大ですが...) 本編では、「アナログ系電子回路の基礎」について紹介します。内容は、取りあえず試作回路を製作するのに必要な知識程度です。 |
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【Index】■アナログ系電子回路図で使うことが多い記号■オペアンプの基礎 ■オペアンプの性質 ■オペアンプの電源の処理 ■アナログ・コンパレータ ■ボルテージ・フォロワ ■アクティブ・グランド ■反転増幅器 ■非反転増幅器 ■差動増幅器 ■入力バイアス電流の小さな差動増幅器 ■計装用アンプ(instrumentation amplifier) ■電流/電圧コンバータ ■電圧/電流コンバータ ■積分器 ■正帰還型ロー・パス・フィルタ ■AD823を単電源で使う全波整流回路 ■AD633を使った同期検波回路 |
ディジタル系電子回路の基礎 パルス密度変調技術によるディジタル回路設計法 (2時間目)へ PDM(Pulse Density Modulation)回路によるDAC,ADC,電子ボリューム等 |
1.アナログ系電子回路図で使うことが多い記号まず、アナログ系電子回路図に登場することが多い記号を示します。1.1) 電源ライン 図1.1は電源ラインを示します。VCCの代わりに実際の供給電圧(例えば、3.3V、5V、12V等)が記入されることもあります。 1.2) グランド 図1.2 a)はグランド(Ground)レベル(0V)を示す記号です。 アナデジ混在回路等でアナログ用グランドやディジタル用グランドなど何種類かグランドを使い分ける場合には図1.2 b)のような記号を使う場合があります。 1.3) 配線の交差 図1.3に示されるように、2本の線がクロスしていても交差部分に黒い丸がない場合には2本の線は互いに結線されていない状態を示します。 1.4) 配線の結線 図1.4に示されるように、2本の線のクロスしている交差部分に黒い丸がある場合には2本の線は互いに結線されている状態を示します。 1.5) 抵抗 図1.5の記号は抵抗を意味します。種類としては、カーボン抵抗、金属皮膜抵抗、セメント抵抗等があり、単位としてはオーム(Ω)が使われます。回路図中では、キロ・オーム(103)はkΩあるいは単にkと、メガ・オーム(106)はMΩあるいは単にMと書かれる場合があります。 1.6) コンデンサ 図1.6の記号は、セラミック・コンデンサ、積層セラミック・コンデンサ、フィルム・コンデンサ、スチロール・コンデンサ、チタン酸バリウム・コンデンサ等、無極性のコンデンサに使われる回路記号です。単位はファラッド(F)が用いられます。ピコ・ファラッド(10-12)はpFあるいはpと、マイクロ・ファラッド(10-6)はμFあるいはμと書かれる場合があります。また、数字3桁でピコ・ファラッドを単位として、ab×10c[pF]を"abc"と記載する場合があります。具体的には330は33pFを, 102は1000pFを, 223は22000pFあるいは0.022μFを, 104は100000pF即ち0.1μFを、105は1000000pF即ち1μFを示します。 1.7) 有極性コンデンサ 図1.7の記号は、電解コンデンサやタンタル・コンデンサなど有極性のコンデンサを示す記号です。+-の極性も記載されています。 1.8) コイルまたはインダクタ 図1.8の記号は、コイルやインダクタに対して使用されます。単位はヘンリー(H)です。ミリ・ヘンリー(mH)あるいはマイクロ・ヘンリー(μH)が使われrます。この記号が使用される場合には空芯コイルである場合が多いです。 1.9) チョーク・トランス 図1.9に示されるように、コイルに2重線が付いている場合には空芯ではなく、鉄芯かフェライト・コアなどの磁性芯に巻かれたコイルであることを示します。 1.10) トランス 図1.10に示されるような記号は磁性芯に複数のコイルが巻かれているトランスであることを示します。1次側、2次側の巻き数、あるいは巻き数比や、電圧が記載される場合もあります。 1.11) ダイオード(Diode) 図1.12に示される記号はダイオードです。矢印の向きが電流が流れる順方向であると憶えるとよいでしょう。 1.12) NPNトランジスタ 図1.13の記号はNPNトランジスタを示しています。Bはベース、Cはコレクタ、Eはエミッタを示します。エミッタの矢印の向きに電流が流れます。 1.13) PNPトランジスタ 図1.14の記号はPNPトランジスタを示しています。Bはベース、Cはコレクタ、Eはエミッタを示します。エミッタの矢印の向きに電流が流れます。 1.14) 電池、バッテリー 図1.15の記号は電池あるいはバッテリーを示す記号です。細長い棒側がプラス極、太く短い棒側がマイナス極を示します。充電できない使い切りのタイプを1次電池、何回でも充電と放電を繰り返すことができるタイプを2次電池といいます。 1.15) リレー 図1.11に示されるような有芯コイルとスイッチ(可動接点)がいっしょになった記号はリレーを示します。リード・スイッチも同じ記号で示される場合があります。 図1.15 リレーとリレー駆動回路の例 |
図1.1 図1.2 a) 図1.2 b) 図1.3 図1.4 図1.5 図1.6 図1.7 図1.8 図1.9 図1.10 図1.11 図1.12 図1.13 図1.14 |
1.16) 発光ダイオード 図1.17の記号は発光ダイオード(LED)を示します。発光ダイオードは通常数mA~20mA程度の電流で発光する素子です。豆電球のように電圧をかければ点灯するわけではありませんので、通常、電流制限抵抗と呼ばれる抵抗を直列に接続して使用されます。電源電圧をVCC[V]、LEDの順方向電位をVLED[V]、電流制限抵抗をR[Ω]とすると電流I[A]は、I=(VCC-VLED)/Rで求められるので、目標の電流値となるように計算します。 LEDにはトランジスタと同様に許容損失という特性があります。簡単に言えば、周囲温度によって流すことができる電流値に制限が生じます。例えば、室温(20℃)では100%(20mA)流すことができても周囲温度50℃の環境では約半分の10mAしか流すことはできず、それ以上流すとデバイスが破壊されます。LEDの点灯状態が危険を知らせるようなシステムでは注意を要する事項です。 赤外線リモコンではより明るく点灯させる必要から、パルス駆動が行われています。連続電流なら最大100mAまでしか流せない赤外線LEDでもオン時間が10μ秒未満のパルス駆動なら2Aまで可能なデバイスがあります。 光量をコントロールするには電流を変えてもよいのですが、パルス駆動してON時間を変える方がより簡単です。 図1.16 LEDとその駆動方法(回路例)、および許容損失 HIRL5010の許容損失の例 1.17) フォトカプラ 図1.16の記号はフォトカプラと呼ばれます。発光ダイオード(LED)とフォトトランジスタが一体となった部品で、光によって入力(LED)側と出力(フォトトランジスタ)側が電気的に絶縁されているため、FAや医療分野などで使用されます。 図1.17 フォトカプラとその使い方(駆動回路の例) 1.18) フォトダイオード 図1.18の記号は、光が入射すると、電流が流れるフォト・ダイオードを示します。 図1.18 フォトダイオード 1.19) オペアンプ(電源省略時記号) 図1.19の記号はオペアンプ(operational amplifier : 演算増幅器)の記号です。数10年程前に使用されていたアナログ・コンピュータに使われた部品だったのでこの名が付いたようです。回路図では、電源周りの配線は通常省略して書かれるため、この記号が使用されます。 図1.19 オペアンプ(電源省略時の記号) 1.20) オペアンプ 図1.20の記号はオペアンプの電源も含めた回路図記号です。 図1.20 1.21) 水晶発振子(クリスタル) 図1.21の記号は水晶発振子に使用される記号です。その名の通り、水晶が使われています。 図1.21 水晶発振子(クリスタル) 1.22) セラロック 通信機だけでなく、電子機器に必須のクロック信号を発生するために水晶発振子は欠くことのできない電子部品でしたが、かっては日本の水晶鉱山の所有権のほとんどが特定の利権者に独占されていたために競争原理が働かず、非常に高価な部品でもありました。この状況を打開するために村田製作所によって開発されたのが、セラロックと呼ばれる安価なセラミック発振子です。キャパシタも実装した3端子の部品がポピュラーです。 図1.22 セラロック 1.23) IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor) IGBTは絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタとも呼ばれます。入力部がMOS構造、出力部がバイポーラ構造のパワー・トランジスタで、図1.23の記号にもそのデバイス構造が反映されています。高耐圧、大電流のスイッチング・デバイスなので、IH(Induction Heating)やモーター・ドライバなどに広く使われています。かってはスイッチング速度は20kHz程度まででしたが、1MHzを超える高速なデバイス(例:東芝GT50M322 tf=0.25μ秒)も登場しています。Gはゲート、Cはコレクタ、Eはエミッタです。 スイッチングだけでなく、ゲート-ソース間電圧によってコレクタ電流を制御することも一応可能ではありますが、その場合、デバイスで膨大な熱が発生することになるのでコレクタ損失を考慮しなければなりません。 逆にスイッチングに使う場合、ゲート-エミッタ間電圧VGEは15Vから10Vを与えないとデバイスの発熱原因になるということになります。 図1.23 IGBTとその特性 1.24) Power MOSFET 耐圧100V程度の素子ならON抵抗が50mΩ程度以下であり、高速のスイッチング素子として用いられる。しかし、耐圧を稼ぐにはN層の厚みを大きくとらねばなら ず、そうするとON抵抗を大きくすることになってしまう。ON抵抗による発熱を抑えるために高耐圧のデバイスでは電流に制約が生じる。Gはゲート、Dはドレイン、Sはソースです。 IGBTと同様にゲート・ソース間電圧をコントロールすれば一応電流の制御が可能ですが、この場合はソース-ドレイン間電圧VDS×ドレイン電流IDの発熱があることを念頭に回路設計を行う必要があります。 図1.24 Power MOSFETとその特性 Toshiba_PowerMOSFET TK60D08J1 |
2.オペアンプの基礎殆どの計測回路を構成するのに十分なオペアンプの基礎的知識について紹介します。 |
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2.1) オペアンプの性質図2にオペアンプの電源を省略した部分を図示します。オペアンプはほぼ理想的な差動増幅器であり、2入力の差を高倍率で増幅することができます。図2に示すように、V+とV-の2つの入力を持っており、2つの入力の差(V+ - V-)を倍率(オープン・ループ・ゲインと言う)Aで増幅し、出力Voを得ます。例えばAD822というオペアンプならこの倍率は20Hzで100dB(10万倍)にも達します。ところで、もし、V+とV-の差が1mVだったら10万倍で100Vが出力されるのかというとそんなことはありません。電源電圧を仮に±12V程度だとすると、普通のオペアンプが出力可能な電圧範囲はせいぜい±10Vくらいまでになります。例外的にRail-to-Rail(レール・ツー・レール)と呼ばれる品種は電源電圧範囲いっぱいまで出力することが可能です。AD822が電源電圧が±12Vで駆動されており、入力電圧がそれぞれV+=3.47mV、V-=2.47mVの場合(前例のようなケース)では、10万倍して+100Vとはならずに、出力電圧は+12Vで飽和します。また、このゲインは実際には周波数特性を持っており、高周波ではゲインは小さくなってゆきます。【グラフ】AD822のオープン・ループ・ゲインの周波数特性 オペアンプの入力インピーダンスは非常に高く、大半は1GΩ以上と考えてよいのですが、反面忘れてはならないのは「世の中のすべての増幅器は入力からエネルギーを奪わないと増幅することができない」ということなのです。バイアス電流という特性がこれを表します。AD822ではTypical2pA(ピコ・アンペア)、maxでも10pAという小さな値ですが、決して0ではないのだということを憶えていることが重要です。この意味はボルテージ・フォロワのところで改めて書きます。 |
【図2】オペアンプの原理 |
2.2) オペアンプの電源の処理 実際の回路図ではオペアンプの電源は省略して書かれることが多いのですが、電源には必ずパスコン(ノイズ対策)を入れます。多くの場合、パスコンとして積層セラミック・コンデンサの104(0.1μF)が使われます。図3に、両電源(例として±12V)の場合と単電源の場合のパスコンの入れ方を例示します。
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【図3】パスコンの入れ方 a) b) |
2.3) アナログ・コンパレータ アナログ・コンパレータとは、基準電圧(リファレンス電圧ともいう)に比べて入力電圧が高いか低いか判定する電子回路のことです。 オペアンプをワンチップ・マイコンやFPGAあるいはCPLD等と同じ電圧の単電源駆動で使うことにより、わざわざコンパレータ専用ICを使わなくてもコンパレータとして使うことができます。図4に例示するように、電源VCCが電源電圧が変動しない非常に安定な電源に接続されているなら、電源-グランド間に2本の抵抗(R1,R2)を直列接続することにより、抵抗分圧比によって任意の電圧V-=R2・VCC/(R1+R2)を作ることができます。入力V+の電圧が基準電圧V-に比して大きければ出力VoはHigh(VCC)側にスウィングします。反対に入力V+の電圧が基準電圧V-に比して小さければ出力VoはLow(GND)側にスウィングします。 この場合、前述したように汎用オペアンプでは出力電圧Voの出力可能な電圧範囲に制約がある場合があります。rail-to-railのオペアンプを使うことが好ましいと思います。 |
【図4】アナログ・コンパレータ |
2.4) 実際のアナログ・コンパレータ 実際の回路では、電源に3端子レギュレータを使っていても、回路中にマイコンなどの変動負荷が接続されている場合には電源電圧VCCに変動がある場合があるので、図5に例示したようにコンデンサ(C)を入れ、変動しにくくします。では何故ダイオードが接続されているのでしょう?これは電源が切れたときに、オペアンプの電源VCCはすぐにグランド・レベルになるのですが、R2、Cの値が大きいとコンデンサにチャージされた電荷の放電が遅くなり、この場合、V-端子にオペアンプの電源電圧(この場合、0V)よりも高い電圧がかかってデバイスが破壊されてしまう場合があるためです。 勿論、抵抗R1,R2の値を小さくすればコンデンサのチャージを放電しやすくなりますが、消費電流を増やす結果になってしまいます。 |
【図5】実際の回路例 |
2.5) ボルテージ・フォロワ 図6にボルテージ・フォロワ(voltage follower)の回路図を示します。出力Voを入力V-にフィードバックしているだけの回路です。オペアンプが原理的に差動増幅器であること、VoとV-が同じ電位であることから次式が得られます。 ここでオープン・ループ・ゲインAを左辺に移項すれば次式が得られます。 ここで、オープン・ループ・ゲインAは非常に大きな値なので無限大と考えます。そうすると、Aの逆数は0に漸近することになります。 つまり、最終的に次式の関係が得られます。 結局、ボルテージ・フォロワの出力Voは、入力電圧V+と等しい電圧が出力されることがわかります。 「え?それにどんな意味があるの?わざわざボルテージ・フォロワなんか使わずに直接接続すればいいだろ?」 というような疑問がわいた人もいるはずです。ところが計測分野ではボルテージ・フォロワは結構使われるんです。 一体、どうして? |
【図6】ボルテージ・フォロワ 注)Vo=V+で、VoはV-に接続されていたので直接接続されていないにもかかわらず、入力V-と入力V+は等しい電圧になります。これをバーチャル・ショート(Virtual Short)といいます。 |
2.6) ボルテージ・フォロワの用途 ボルテージ・フォロワの用途はそのバイアス電流が非常に小さいという性質に依るものです。図7にその典型的な例を示します。図7aの回路はコンデンサにチャージされている電荷(Q=CV)によって決まる電圧を調べる実験回路です。実際に測定してみるとあっという間にコンデンサの両端電圧は低下していくはずです。一般にテスターの電圧測定時には1μA台のバイアス電流が必要であるため、測定することでコンデンサの電荷を放電してしまう欠点があります。しかし、図7bのようにボルテージ・フォロワを使えば、ボルテージ・フォロワ自身のバイアス電流は1pA台(ものによっては1fA台のものも実現できます。)と6桁も違うので、ほとんどコンデンサのチャージを放電させることなく測定することができるのです。 ワンチップ・マイコンに内蔵されているA/Dコンバータの入力バイアス電流も1μA台のものが多いようです。正確な電圧測定を行いたい場合にはアナログ入力にボルテージ・フォロワを使う場合があります。 【図7】 ボルテージ・フォロワは一体何に使うのか? a) 直接接続の場合、テスター自身の大きなバイアス電流のせいで正しい電圧が計測できない。 b) ボルテージ・フォロワ接続では、オペアンプ自身のバイアス電流はpA台と無視できる程小さいので、コンデンサのチャージはほとんど影響を受けない。オペアンプがテスターのバイアス電流を供給する。 |
注)実際に図7bの回路で実験してもコンデンサの放電現象は観測されるはずです。コンデンサ自身にも並列抵抗Rp成分が存在しますし、コンデンサに手で触れると汗などの塩分が表面に付着して汚染され、放電が起こりやすくなります。さらに空気中の湿度も放電を促進する原因となります。 注)左図にミスがあり、修正しました。 /2009/01/06/ |
2.7) アクティブ・グランド ボルテージ・フォロワの応用例で次に多いのは図8に示すようなアクティブ・グランド回路でしょう。回路が両電源で駆動されている場合には必要ないのですが、バッテリー駆動の装置や、低価格を意識した電子回路では、両電源を利用できない場合があります。この場合、図8のように単電源の中間レベルの電圧を抵抗(R1,R2)の分圧によって作り、グランド・レベルとすることにより単電源でもバイポーラ動作をさせることが可能になります。例えばVCCを9V、R1=R2=50kΩとすれば、Voは4.5Vとなり、Voをグランド・レベルとすることにより、±4.5Vの電源で動作させるのと同じ回路を実現することができます。 【図8】アクティブ・グランド |
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2.8) 電流駆動能力の増強方法 オペアンプの電流駆動能力には制約があり、通常は10mA程度でしょう。しかし、場合によっては50mA程度の電流駆動が必要になる場合があります。このような場合は図9のようにトランジスタを接続して電流駆動能力を増強することができます。 【図9】電流ブースターの例 |
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2.9) 反転増幅器 図10に反転増幅器の回路図を示します。動作原理を理解するために、オペアンプの入力バイアス電流が非常に小さく、ほとんど無視できると考えます。つまり、入力Vinから流れ込む電流iは抵抗R1とR2を通って出力側に流れることになります。バーチャル・ショートが成立するので、V-=0となり、電流iに関して成立する2式を整理して 出力Voと入力Vinの関係がわかる。反転増幅器の増幅率はR2/R1であり、極性は常に反転することがわかる。 なお、反転増幅器の入力バイアス電流はibias=Vin/R1となり、R1=10kΩ、Vin=1Vのときibias=100μAと非常に大きいことがわかる。従って、反転増幅器は、電流駆動能力の低いセンサに直結させるのには適していないことがわかる。 また、通常、反転増幅器はR1<<R2として入力信号を増幅する目的で使用するが、反対にR1>>R2として信号振幅の大きな信号を減衰させる目的にも利用できる。 【図10】反転増幅器 |
●抵抗値は幾らに設定するか? 抵抗値が小さ過ぎると、入力バイアス電流iが大きくなってしまいます。例えば、入力電圧10VでR1=100Ωとすると入力バイアス電流は100mAにもなり、10Ωだと1Aというとんでんもない値になります。これは入力に接続する機器やデバイスがそれだけの電流を供給できないと、この回路が動作しないことを示しています。 オペアンプ1個が出力できる最大電流は品種によって異なりますが、仮に最大10mAとすれば、その1/10の1mA程度が適切な負荷範囲と考えられます。この増幅器の入力側にオペアンプの回路が接続されているとするなら、入力バイアス電流iが1mA以下となるように設計しなければなりません。するとR1は10V入力時なら10kΩという具体的な値が得られます。 では、この抵抗を大きくすればそれでいいかというと、今度はオペアンプ自身の入力バイアス電流に比して十分大きい必要性と、ジョンソンノイズ(抵抗自身の熱雑音)が抵抗値に比例して大きくなること、帯域幅の制約等と多くの制約が生じます。 |
●帯域幅 上記の抵抗設計だけですべての周波数で増幅率を実現できるわけではありません。オペアンプ自身のオープン・ループ・ゲインという限界があるので、例えばAD822の場合に増幅率1000倍(60dB)の設計値では帯域幅は10kHzとなり、100倍なら帯域幅は100kHzとなります。 【グラフ】AD822の増幅率と帯域幅 |
●ジョンソン・ノイズ ジョンソンノイズ(ホワイトノイズ)とは、抵抗値R[Ω], 温度T[K], 帯域幅Δf [Hz]で決まる電圧ノイズ vである。次式で表わされる。 kは ボルツマン定数1.38×10-23[JK-1]である。 特に増幅器の入力側に抵抗が接続されていると、このジョンソン・ノイズも増幅されてしまいます。 従って、入力側の抵抗を大きくするとその抵抗自身のジョンソン・ノイズによって入力信号がノイズに埋もれる結果となるため、微弱信号の検出を行う際の重要な設計要素となります。 |
2.10) 非反転増幅器 図11に非反転増幅器の回路図を示します。2.11)と同様にバーチャル・ショート(V+=V-)を仮定し、オペアンプの入力バイアス電流が無視できる程小さいことに着目し、抵抗R2, R1を流れる電流iについて整理すれば、最終的に非反転増幅器のゲインが1+R2/R1であることがわかる。 抵抗値で増幅率を設定する場合、R1=10kΩ, R2=100kΩでゲイン=11倍となり、10倍、100倍等に設定することは困難であるが、入力バイアス電流がボルテージ・フォロワと同様に非常に小さいという優れた特徴がある。 【図11】非反転増幅器 |
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2.11) 差動増幅器 図12に差動増幅器の回路図を示します。教科書では4本の抵抗の値を変えて増幅する例が紹介されていますが、実際にそのようなアプリケーションを目にすることはほとんどありません。殆どの場合、増幅する用途よりも、差をとる用途に使われているようです。何故なら、抵抗値にもばらつき(誤差)が伴い、ディスクリートでこの回路を組むと誤差も増幅される結果となってしまうからです。 上記の理由で抵抗は4本ともRとします。オペアンプの入力バイアス電流が非常に小さく無視できることから抵抗分圧によりV+とV-の電圧が求められます。さらにバーチャル・ショート(V+=V-)が成立することから2式を整理することで出力Vo=Vb-Vaであることがわかります。 この回路の欠点は、反転増幅器と同様に差動増幅器自体の入力バイアス電流が非常に大きいことです。 従って駆動能力の低いセンサや信号源への接続には適していません。微弱な信号源に接続する場合は計装用アンプを用います。 【図12】差動増幅器 |
/2009/01/17/ ■差動増幅器は、心電計や脳波計等の微弱信号の増幅には適しません。入力信号の電圧レベルをVa=-1[mV], Vb=1[mV], 抵抗をR=10[kΩ]とすると、 V+ = V- = 0.5[mV] であり、 Va - V- = -1.5[mV] です。 差動増幅器の入力バイアス電流iは i = -150[nA] となります。 従って、この差動増幅器を接続する測定対象から上記の入力バイアス電流分だけ漏えい電流が流れ出すことを意味します。正しい測定結果を得るためにはこの電流値の少なくとも1000倍以上の電流供給能力(150μA以上)を持った対象である必要があります。この条件が満たされないと、信号が減衰してしまったり、発振の原因となります。 ■つまり、差動増幅器では心電計や脳波計の初段増幅を行うことは不可能なのです。このような用途には入力バイアス電流が小さな計装用アンプが適しています。 |
2.12) 入力バイアス電流の小さな差動増幅器 入力バイアス電流の小さな非反転増幅器と特徴を生かし、かつ差動で増幅を行う増幅器の回路図を図13に示します。バーチャル・ショートの成立より図示電流iに関して2式が得られます。これを整理して、入力Va,Vbと出力V1,V2の関係式が得られます。 この回路の良いところは、入力バイアス電流が非常に小さいことに加え、抵抗R1を変えるだけで増幅率が変更できる点です。しかし、差動出力のままでは少々不便です。 |
【図13】入力バイアス電流の 小さな差動増幅器 |
2.13)
計装用アンプ(instrumentation amplifier) 微弱な信号を精確に増幅したいアプリケーションが数多くあります。そこで2.11)と2.12)の差動増幅器を組み合わせた計装用アンプが考えられました。図14に回路図を示します。これをIC化した差動増幅器がAD620, AD621, AD623などです。外付け抵抗1本で増幅率を変更できるAD620や機能ピン間をオープンまたはショートさせることで倍率を10倍または100倍に変更することができるAD621、単電源なら3V, ±2.5Vという低電圧でも動作する改良を加えたAD623、さらに2.2Vでも動作するAD627等豊富な品種があります。 【図14】計装用アンプ |
【注】式にミスがありました。 2009/01/05修正 |
回路設計で機能ブロック図を書く場合や、回路図中で計装用アンプICを表記する場合には「計装用アンプの表記例」のように記入します。計装用アンプに使われる抵抗のうち、通常は増幅率設定に関係する抵抗R1だけを記入すると便利です。 また、計装用アンプの使い方でよく相談されるトラブルを紹介します。 右下のように負荷電流を測定するシステムで、50mΩから100mΩくらいの電流測定用抵抗を接続して負荷電流Iによって発生する電圧V=RIを計装用アンプで測定する回路ですが、ケースa)の接続では不安定かつ交流雑音で測定できません。これは、計装用アンプの入力インピーダンスが非常に大きいため測定対象回路と測定回路が絶縁されているような状態となっており、電源電位が互いに一致していないためです。 つまり、Vb-Va=1Vであっても、計装用アンプ側の電源電位を基準にすると、Va=20Vだったり、Va=-30Vだったりすると、入力が電源電圧範囲にないため適切な出力が得られません。そこで、アース(GND)を測定対象回路にも接続する必要が生じます。 |
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2.14) 電流/電圧コンバータ 図15に電流/電圧コンバータの回路図を示します。I/V変換とも称されます。フォトダイオードの電流を電圧に変換する場合、ノイズが重畳しにくく、ケーブル線の抵抗値の影響を受けにくい電流伝送において電流を電圧に変換する場合などに用います。バーチャル・ショートの成立から、V-=V+=0であり、オペアンプの入力バイアス電流が非常に小さいことから次式の誘導が成立します。 従って、例えば抵抗を10kΩにすれば、-100μAの電流を+1Vに変換することができます。 |
【図15】電流/電圧コンバータ |
2.15) 電圧/電流コンバータ 図16に電圧/電流コンバータの回路図を示します。V/I変換とも称されます。計測アプリケーションでは定電流を流しながら測定するセンサ(例えばホール素子、MRセンサ等)やコイルに所定振幅の電流を供給したい場合などがあります。このような場合に使います。構造的には、2.11)の差動増幅器と2.5)のボルテージ・フォロワを組み合わせた回路になっています。抵抗rを挟んで電圧がVo-VinとVoになり、そこに電流iが流れると考えるとVoが消去されて電流iと入力電圧Vinと抵抗rの関係を導くことができるでしょう。図16中のZはセンサやコイルなどの負荷を示しています。 【図16】電圧/電流コンバータ |
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2.16) 差動入力の電圧/電流コンバータ 図17に差動入力の電圧/電流コンバータの回路図を例示します。ワンチップ・マイコンやCPLD、FPGAなどのように単電源で動作するICの出力しかなくても図中のVa、Vbのように位相を180度ずらせた信号を供給することにより、バイポーラ出力に変換することができます。但し、このコンバータの電源自体は両電源(例えば±5V)を供給する必要はあります。 【図17】差動入力の電圧/電流コンバータの例 |
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2.17) 積分器 図18に積分器の回路図を示します。コンデンサCに蓄積する電荷Qと両端電圧VがQ=CVの関係があり、電荷Qは抵抗Rを通ってコンデンサに流れ込む電流iの積分値になっていること、電流の向きからVoの極性がマイナスになることなどから次式が誘導されます。 【図18】積分器 |
注)積分器は制御分野ではネガティブ・フィードバック・ループに使われます。またシグマ/デルタ変換型A/Dコンバータを構成する際にも利用されます。応用事例を下図に例示します。 【図18b】∑⊿変換型A/Dコンバータ |
2.18) 積分器を応用したロー・パス・フィルタの例 図19に積分器のコンデンサに並列に抵抗R2を接続して、低周波におけるゲインを-R2/R1に固定したロー・パス・フィルタ (Low Pass Filter)の回路を例示します。 【図19】積分器を応用したロー・パス・フィルタの例 |
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2.19)
オペアンプ正帰還型ロー・パス・フィルタ 図20にオペアンプ正帰還型ロー・パス・フィルタの回路図を示します。同じ容量のコンデンサを並列接続しているのは、コンデンサは抵抗に比べて誤差が大きいものが多く、ちょうど2倍の値を揃えにくいので、同じ容量のコンデンサを2個並列にする方が精確で容易だからです。また、実際に試作でプリント基板を製作する際にパターンを起こしやすいというメリットがあります。 【図20】オペアンプ正帰還型ロー・パス・フィルタ |
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2.20)
AD823を単電源で使う全波整流回路 図21にAnalog Devices社のAD823を単電源で使うことで全波整流回路を実現する方法を紹介いたします。普通のオペアンプではありえない回路なのですが、このrail-to-railのオペアンプは電源電圧よりも18V程度までは耐えるように設計されています。単電源で使用しているので正負の信号入力があった場合、出力は0V~電源電圧の範囲に制約される性質をうまく利用しています。 回路はボルテージ・フォロワーと反転増幅器で構成されます。まず、正値の入力に対しては、単電源なので非反転増幅器は反転して負の値を出力できないので0となります。このときボルテージ・フォロワーは入力に追従して正の値を非反転増幅器のリファレンス電圧として供給するので、非反転増幅器はプラス分のオフセット電圧を出力します。 反対に負値の入力に対してはボルテージ・フォロワーは単電源なので追従できず、0を出力します。このとき非反転増幅器は負値を反転して正値を出力します。オフセット分は0なので、そのまま正値として出力されます。 【図21】AD823を単電源で使う全波整流回路 |
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2.21)
AD633を使った同期検波回路 図22にAnalog Devices社のアナログ乗算器AD633を使った同期検波回路の事例を紹介いたします。多くのセンサは低周波域に1/fノイズと呼ばれる低周波雑音を持つことが多く、S/N向上の策として同期検波が用いられます。 20kHz未満の同期検波回路であれば、ディジタル回路技術を使い、シグマデルタ変換を行った(2値化の)後で排他的論理和(Exclusively OR)によって乗算を実現することができるのでこのような回路の出番はありませんが、20kHz以上1MHz未満の周波数帯域での乗算を行いたい場合にはAD633を使います。電源電圧が±5Vの制約がありますがAD835を使えば帯域はさらに広がります。 前段のBPFの目的は1/fノイズのカットだけではなく、広帯域になればなるほどジョンソンノイズの影響を受けるので不要な帯域分をカットするためのものです。検出する情報帯域をΔf[Hz]とすればBPFの帯域はキャリア周波数f0[Hz]を中心にf0-Δf~f0+Δfとなるように設計します。後段のLPFのカットオフ周波数はΔf[Hz]にします。 BPFはHPFとLPFをカスケード接続して構成します。LPFのコンデンサと抵抗を置き換えるだけでHPFを構成することができます。 【図22】AD633を使った同期検波回路の例 【同期検波回路に関する質問】【質問】【NTL掲示板】『赤外線脈波の検波 - カンコーヒー』2011/09/26 (Mon) 14:41:30【回答】掲示板に質問があったので説明を追加しました。S/N比の考え方等。 |
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【あとがき】本編では、アナログ系計測回路の試作において、頻繁に登場する回路ブロック(ボキャブラリと呼んでいます。)を取り上げて解説しました。 実際に通常の計測アプリケーションで利用するボキャブラリは30程度で十分であると思います。従って、アナログ回路入門書などに登場するようなアクティブ・フィルタなどは意図的に紹介していません。これらは実際のプリント基板などではDSP (Digital Signal Processing)などで実現した方がコスト、工数等の点で優れているためです。少なくとも、私のホーム・ページのアプリケーションの殆どは今回紹介した回路ブロックを使って構成されているため、これらが理解できれば(知っていれば)問題なく動作の理解ができると思います。 |
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