【参考資料】投稿記事 「心電計の製作

更新日 /2006/05/27/
最終更新日 /2009/01/27/


   



 

トランジスタ技術 20061月号
心電計の製作
【注意事項】
 本ドキュメントで紹介する製作物は、作り方や使用方法を誤ると人体に影響を及ぼす可能性があります。バッテリー駆動やAC結合、光絶縁など、安全には万全を期していますが、電子工学および医学に対する十分な知識と電子回路の製作経験が少ない方は決して製作しないで下さい。                                    Tomoaki Ueda  (上田智章)
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【予告】この記事は古くなったのでもうすぐ再編集されます。

【心電図波形の成り立ち】
なぜ体の表面に電圧が発生するのか
 心臓は心筋を収縮させることによって、血液を肺や全身に循環させるポンプとして機能する臓器です。図1に示すように、心臓には左右に隔壁と弁膜で仕切られた心房と心室が備わっています。
 それ以外にも、心房と心室を構成する心筋を絶妙なタイミングで収縮コントロールするための電気的指令を出したり、伝えたりする組織を備えています。洞結節と房室結節という二つの結節組織と興奮伝導路と呼ばれる神経がこれに当ります。
 電気的にコントロールするといっても、電子回路と違って、心筋の収縮指令は瞬時に伝わるわけではありません。興奮状態の細胞が隣接する細胞を刺激して、順次、電気的興奮状態を伝播させるので、興奮が伝わるのに一定の伝播時間がかかります。興奮状態にある細胞は分極しており、一種の電池のような状態(電流源)になっています。
 人体を構成する組織は、1kHz以下の周波数では誘電率の影響を無視でき、抵抗で置き換えて考えることができます。表1に示すように組織ごとに固有の導電率をもっており、血液、筋肉、脂肪はもちろん、骨にも電流が流れる性質があります。
 図2に示すように、心臓内に興奮状態の部位(電流源)があると、抵抗性をもった周囲の組織には帰還電流が流れ、体表面の任意の2点間には電位差が発生することになるのです。興奮状態の変化によって電流の向きや電流の発生場所が変われば、体表面電位の極性や強さも変わります。体表面電位信号のうち、心臓内の電気活動状態に応じて変化する成分を心電図と呼びます。

心臓内の組織と心電図波形の関係
▲洞結節(SAノード)
 ペースメーカ細胞で構成された洞結節(SAノード)は、心拍リズムの起点となる電気的興奮を発生するいわば発振器で、図3(a)に示すように興奮伝導路を通してその興奮を房室結節(AVノード)に伝えるとともに、心房心筋組織は右房から左房へ順次興奮を伝えます。次に図3(b)に示すように、その興奮は心房心筋を収縮させて心室へ血液を押し出します。
▲房室輪
 心房と心室の間には、房室輪と呼ばれる膜があります。心房心筋の興奮は、心室心筋側に直接伝わらないように、房室輪によって絶縁されており、心房が収縮して心室への血液の送り込みが完了するまでに、勝手に心室が収縮することがないようになっています。
▲房室結節
 房室結節は伝導された興奮を遅延させ、心房の収縮が終わったタイミングで心室を収縮させる指令を発します。房室結節が遅延させた興奮は、心室心筋側に唯一接続されている興奮伝導路であるヒス(HIS)束を通して心室側に伝わり、左右両束に別れ、さらにプルキンエ繊維網へと細かくわかれながら心室心筋全体に興奮を伝導します。心筋に伝導された興奮は心筋の収縮を促し、心室を収縮させます[図3(d)、図3(e)]。
 以上のように、心拍ごとに心筋内には興奮電流が位置や方向、分布を変えながら時間をかけて伝導しているのです。その結果として、体表面の各部には電位差が発生し、変化します。




Geddes L, Baker L (1967) The specific resistance of biological material
---A compendium of data for the biological engineer and physiologist. Med.Biol. Eng. 5: 271-293